研究課題
Spring8において、γ+n→K^++K^-+n反応におけるn+K^+の不変質量分布から、質量がおよそ1540MeV、崩壊幅が20MeV程度のペンタクォークΘ^+と呼ばれる粒子が推定され、これに対して構成子クォーク模型を使って考察した。構成子クォーク模型はバリオンの記述で成功を収めており、我々はグルオン交換相互作用(OGEP)を基本とする模型、およびカイラル対称性の自発的破れに伴い現れるゴールドストーンボソン交換(GBE)が主要な役割を果たす模型を用い、クォーク相関を考慮した束縛状態としてのペンタクォークの記述を試みた。しかし、連続状態であるK^++nのチャンネルが開いている訳だからペンタクォーク状態を求める場合にもこの連続状態との結合チャンネルの計算が必要である。この点を考慮する方法としては、K^++nの散乱問題をクォーク・クラスター模型で記述した。単純化された模型を使うと、このチャンネルでは幅の狭い共鳴は現れない。主な理由は、この量子数を持つ軽い質量のバリオン・メソン系がK^+n以外に存在しなくて、強く結合するチャンネルが無いためである。今年度は、バリオンとして、SU(3)の8重項と10重項、メソンとして8重項の擬スカラーとベクトルメソンを考慮した多チャンネルの散乱問題を考察した。散乱問題の一つとしてΛ(1405)の状態をペンタクォークとして記述する研究を行った。この系では、8重項バリオンと擬スカラーメソンだけでも、強く結合するチャンネルとして、Σπ,NK^^-、Λη、ΞKなどが存在し結合チャンネルの散乱問題において複雑な振る舞いを示す。バリオン・メソン間の相互作用として、カイラルLagrangianから得られるものを使った計算では、Σπ散乱でのMass Spectrumで閾値より70MeV位のところにピークが現れる。我々は、類似の相互作用を用いて、さらに3クォークから作られる状態と仮定した「連続状態に埋もれた束縛状態」との結合まで考慮した計算を行った。相互作用の強さを変化させても、3クォーク状態を入れると同じようなピーク構造を再現できることが分かった。上記のバリオン・メソンの散乱問題をクォーク・クラスター模型を使って計算した。相互作用は、バリオンの記述で成功を収めているグルオン交換に、閉じ込めとインスタントン誘起相互作用(III)を用いた。この模型ではNK^^-の引力が前述の模型と異なり弱いために、バリオン・メソン系だけの結合チャンネル計算ではピークは生じない。しかし、バリオン・メソン系と結合する3クォーク状態を導入すると、同様のピークを生じることが分かった。これらの研究成果に関して、現在、論文としてまとめている。
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Proceedings of YKIS Seminar on New Frontiers in QCD. Kyoto, Japan, Dec. 2006. (印刷中)
Proceedings of 18^<th> International IUPAP Conference on Few-Body Problems in Physics. San Paulo, Brazil, Aug. 2006. (印刷中)
Physical Review D74
ページ: 054029