研究概要 |
本研究の目的は,地上における大気チェレンコフ望遠鏡観測において,観測のスケジューリングや観測効率,観測データの質に大きな影響を及ぼす雲を常時監視し客観的な記録を残すために,8μmから14μmの赤外線に対して感度がある非冷却型固体操像素子を備えた市販の赤外線カメラをペースにした赤外線全天雲モニターの開発を行うことであった.本雲モニターの導入による空の状態の常時監視と客観的記録が実現すれば,データの質の向上が期待され,効率的な観測のスケジューリングが可能となる. 昨年度までに本体が完成し,リアルタイムのビデオ画像をモニター画面で監視できるところまでは到達していた.本年度は,リモートコントロールシステムの開発とインストール,画像の数値処理,長期安定性のチェック,等を行った.リモートコントロールについては,特注の45m長RS232Cケーブルでカメラとコントロールルームをつなぎ,パソコン上からGUIを用いて行えるようにした.適切なキャリブレーションを行えば,オフセットをオートにし,ゲインのみ調整すれば見やすい画像が得られることがわかった.また,昼間は摂氏40度を越える猛暑の砂漠の中で9日間の長時間連続運転テストの結果,一部のピクセルにノイズが乗ったものの正常に動作することが確認された.観測中には肉眼では視認できなかった薄い雲が,モニター画面上でははっきり見えており,その有効性が確かめられた.さらにデータを1次元スライスすると,雲の位置とその厚さが明確に見え,快晴でも天頂より低空の方が赤外線が強く見られた.キャリブレーションの仕方により画像の質が左右されるため,最適なキャリブレーション方法を確立することが課題である.現在画像データはJPEGで取り込んでオフラインでFITS形式への変換を行っているが,これをオンライン化することも考えている.
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