今年度は、(1)非常に大きい質量を持った星の重力崩壊とそこからのニュートリノ放出、(2)重力崩壊型超新星コアの安定性、及び(3)強く磁化した大質量星の重力崩壊と元素合成の3点に関して研究を行った。 (1)については、現在の宇宙でも存在すると考えられている40倍の太陽質量をもった星と、宇宙初期に第1世代星としてのみ存在したと考えられる100-1000倍の太陽質量を持った星に着目した。どちらも重力崩壊のあとにブラックホールを形成すると考えられる。球対称性を仮定し、一般相対論的な輻射流体力学シミュレーションを行い、ダイナミクスの特徴とニュートリノの光度、スペクトルを計算し、その観測可能性を議論した。特に前者では、ニュートリノの光度とスペクトルが通常の超新星と定性的に異なるため、その観測からブラックホールの形成がわかること、またブラックーホール形成までにかかる時間から高密度核物質の性質が推定できる可能性があることを世界で始めて指摘し、Physical Review、Lettersに発表した。 (2)については、最近話題になっているStanding Accretion Shock Instability(SASI)と対流を同じ定式化のもとで線形解析し、それらの関係を明らかにするとともに、2次元軸対称を仮定した数値計算で、不安定の非線形成長とその飽和を詳細に明らかにした。また、そこから放出される重力波についても計算を行った。 (3)については、ガンマ線バーストの有望なシナリオの一つであるコラプサーモデルにもとづき、そこで起こると期待される重元素の合成を2次元のMHDシミュレーションにより定量的に明らかにした。
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