研究概要 |
今年度は以下の3点について重点的に研究を行った。(1)重力崩壊型超新星コアにおける降着衝撃波不安定、(2),ブラックホールへの移流優勢降着流における不安定、(3)ブラックホール形成をともなう大質量星の重力崩壊におけるハイペロンやクォーク等の出現のダイナミクスへの影響。以下順に成果をまとめる。 (1)我々は、定常衝撃波を伴う降着流における不安定の線形段階から非線形飽和にいたる進化を3次元シミュレーションにより詳細に調べた。その結果、3次元的不安定は軸対称2次元的不安定よりも飽和振幅が小さいもののニュートリノ加熱に与える影響は同程度となることが明らかになった。また、非軸対称モードが卓越することはなく、それによりパルサーの自転を誘起することは考えにくいことも示した。一方、降着流自身が回転している場合は、回転方向にパターンが回る非軸対称モードの成長が助長されることも見出した。これは線形解析の結果とも矛盾しない。(2)ブラックホールへの定常衝撃波を伴う遷音速降着流においても(1)同様の非軸対称不安定が存在することを線形解析と数値シミュレーションにより明らかにした。完全に一般相対論的な定式化を用いたため、ブラックホールの自転による慣性系の引きずりの影響を明らかにすることができた。また、不安定を引き起こす角運動量とベルヌイ定数の組合せが、大質量星の進化モデルの予言するも のに近いこともわかった。(3)角運動量をほとんど持たない大質量星の重力崩壊とブラックホール形成の観測はまだないが、我々はこうした天体から放出されるニュートリノから何がわかるかを系統的に調べてきた。今年度は、ハイペロンやクォークの出現の影響に着目した。 その結果、これらの粒子の生成は、その後のブラックホール形成を早めること、また、核子のみでやわらかい状態方程式の場合との区別はより詳細な比較を必要とすることなどを明らかにした。
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