素粒子統一理論に基づいた新しい重力概念を与えるブレイン重力理論は、宇宙論においても新しいパラダイムを与えるのではと期待され、近年盛んに研究されている。そこで、本研究は、ブレイン宇宙論において何が基本的に重要か、何を明らかにすることで新しいパラダイムになりうるのかといった問題を、宇宙論における基礎的諸問題に焦点を絞り、系統的な解析を行うことを目的としている。特に、ブレインを考えに入れた新しい重力理論を考察することにより、ダークエネルギー、宇宙項問題、宇宙創生、宇宙の初期特異点など宇宙の本質的かつ最重要課題について考察する。 具体的には、本年度は以下のテーマに関する研究を行った。 (1)ブレイン衝突など従来とは異なる背景時空における初期宇宙の進化の研究 (2)超ひも理論を基礎にしたインフレーションの可能性の探求 (3)超ひも理論を基礎にしたブラックホール解の構成 (1)のブレイン衝突に関しては新たに自己重力を考慮し、数値的に解析を行った。重力の影響で衝突したブレインは不安定となり、特異点形成を伴うことを示した。(2)に関してはKKLMMTなどのポテンシャルタイプのインフレーション以外に、曲率の高次補正項が十分のインフレーションをもたらすことを示した。しかしながらこのシナリオがうまくいくには初期値の微調整が必要で、リッチ曲率を含めた補正項のより詳細な解析が必要であることを明らかにした。(3)に関しては、従来採用されていたBPS方程式を解く方法を一般化し、新しいブラックホール解の構成法を示した。 本研究によりブレイン重力および宇宙論におけるいくつかの問題点が明らかとなったが、次年度はそれらを中心として解析し、ブレイン重力シナリオの長所・短所について明らかにする。
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