本年度の研究遂行は、これまでの研究により構築されているΛp及びΛΛ散乱に関する数値計算実験の更なる進展である。この為まず既存のプログラムの問題点を検討しその改善策を検討した。スーパーコンピュータ(大阪大学核物理研究センター)によるベクトル及び並列化を実施する為と、プログラムの信頼性の検証の為、より自由度の低い系である二中間子散乱系においてプログラム開発を行うことが重要であると判断した。その結果ストレンジネスを含む系としてマルチクォーク状態との関連から、πK散乱に関する散乱長の導出を行った。ここでは散乱長を与える形式をこれまでのΛp散乱と同様に、4点関数と二中間子の質量を与える2点関数の数値実験から評価した。計算時間の短縮の為ノイズ法に修正を加え、さらにベクトル化と並列化を行った。導出過程に用いた手法は同様の形式で二体のバリオン系においても用いることが可能であり、スーパーコンピュータ(SR11000:広島大学)を利用して数値計算実験を行った結果、現実的な計算時間の確保に大変効果的であることが判明した。この結果の中間報告として、第61回日本物理学会年次大会(愛媛大学)にて「格子QCD理論によるπK散乱の散乱長」の題目で講演を行った。また2006年夏に開催される国際会議において詳細な報告を行う予定である。一方二核子系の相互作用に関して非弾性散乱を含むエネルギー領域での検討を行い、二核子系の直接的な評価に加えて、非弾性散乱領域における粒子生成過程に対する初期状態散乱振幅の評価を試みた。これはストレンジネスを持つバリオン・メソン粒子生成過程の研究に資するものである。中間報告としてThe Third Asia-Pacific Comference on Few-Body Problems in Physics(タイ王国)にて講演を行った。講演内容はInterational Journal of Modern Physics Aに論文として平成18年度出版されることが決定されている。以上の経過より、次年度はストレンジネスを含む二体のバリオン系にプログラムを拡張し、大規模数値計算実験を行う予定である。
|