研究概要 |
本年度はこれまでに得られた結果の中間的結論をまとめる為、大規模数値実験計算により得られた結果を精査し、問題点と改善点を明らかにした。結果に寄与する3種類のdiagram (A, H, X)のうちdiagram Aにおいていわゆるlattice artefactの算出が必要であること、さらに最終的な散乱量を得る為に必要なfittingの手順に関する改良の必要が認められた為、これら必要な改善について検討し再計算を実行した。その結果、基底状態に加え励起状態も考慮した2 pole fitによる結果は、これまでの1 pole fitと異なることが明らかとなり、他グループとの相違も明確になった。一方、現実の実験値との比較に必要なchiral limitにおける結果において、energy shiftによる外挿で特徴的な事実が存在することが判明したため、分析を再実行した。 一方、我々が今年度解析対象としたπK系においては、いわゆるconstituent rearrangement diagramに対応するため、これまでのregge modelの研究から得られている知見を基に、diagram A, H, X間のrelative phaseの検討等を行った。本研究の数値実験で得られた結果とこれまでのモデル計算によって示唆される結論との比較は大変興味深いものであり、今後の課題としたい。 バリオン間の統一的模型としての運動量空間に対する改善については、プログラムの整備を実施した。これまで運用してきた計算機環境からの移行がその主なものである。 本研究課題の大規模数値計算実験の計算時間確保とモデル構築に関する検討の進捗を改善するため、3名の研究分担者を追加することとした。最終年度となる来年度は、更なる計算時間確保を実施し、精度の向上と計算対象となる系の拡張を行っていきたい。
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