平成17年6月に放射線総合医学研究所のHTMAC加速器を用いて、高エネルギー重イオンに対するNaI検出器のエネルギー分解能と傾斜電極型電離箱の原子番号識別能力とを調べる実験を行った。この実験は理化学研究所、新潟大学及び埼玉大学との共同研究として行った。用いた重イオンビームはXe(Z=54)という非常に重い原子で、ビームエネルギーは将来のRIビームファクトリーのエネルギー領域である核子当たり400MeVで実験を行った。その結果、傾斜電極型電離箱をこついてはZ=54の領域においても原子番号の識別が可能であることがわかった。一方、NaI検出器についてはビーム強度が非常に弱いところでは十分なエネルギー分解能が得られるが、実用的なところまでビーム強度を上げると出力波高が低下してビームエネルギーと出力波高の間の直線性が急速に崩れていくことがわかった。このことは重イオンの質量数の同定に大きな障害をもたらすことになるので、NaI検出器に対しての何らかの改良、あるいはNaI検出器に替わる別のエネルギー測定器の検討が必要であることがわかった。 高エネルギー重イオン粒子に対しての高分解能の飛行時間測定装置の開発については、薄いプラスチックシンチレータと立ち上がり時間の非常に速い光電子増倍管の組み合わせで行うことを考えている。このために必要なプラスチックシンチレータと光電子増倍管とを購入し、テスト用の実験装置の制作を行った。プラスチックシンチレータからの光の読み出しは4方向から光電子増倍管によって行っているが、光電子増倍管内での特異な雑音の存在によって時間分解能の測定に障害が出た。そこで現在この問題の解決を試みているところである。
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