カウンターテレスコープの構成要素である3種類の検出器について、ΔEカウンターは傾斜電極型電離箱を用い、エネルギーカウンターはNaI(T1)検出器を用い、TOFカウンターはプラスチックシンチレータを用いてそれぞれ開発を行った。このうちΔEカウンターとNaI(T1)検出器を用いた原子番号識別のテスト実験は放射線医学総合研究所のHIMAC加速器からの高エネルギー重イオンによって行った。用いた重イオンビームはKr(Z=36)およびXe(Z=54)で、ビームエネルギーはRIビームファクトリーのエネルギー領域である核子当たり400MeVで実験を行った。その結果、Z=54というかなり重い原子核に対して原子番号の識別が十分出来ることが解った。但し、これはビーム強度が非常に弱い場合に限られ、実用的なところまでビーム強度を上げていくと、NaI(T1)検出器の出力波高が急速に低下して行き、ビームエネルギーと出力波高の直線性が崩れてしまうことが解った。このことはTOFカウンターと組み合わせて質量数同定を行う場合に大きな障害となるので計数率に強いエネルギーカウンターの開発がさらなる課題として残った。TOFカウンターであるプラスチックシンチレータについては、高速の光電子増倍管を用いて4方向からの光読み出しで粒子の到達時間を決めるという方法を試みた。このとき4方向への光の到達時間はconstant fraction discriminatorのような電子回路で決めるのではなく、光電子増倍管の波形データをデジタルオシロスコープで読み出し、波形解析のよって決めるという方法を取った。このような方法を取ると波形データに乗っている雑音の影響を除去することが出来る。宇宙線粒子によってテストした結果、90psという時間分解能が得られたが電離損失の遙かに大きな重イオンに対してはこれよりかなり高い時間分解能が期待される。
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