本年度は、活動銀河核からの紫外光放射により、銀河間物質の温度や圧力、イオン化率などの物理状態がどのように変化していくのか、また、特にHeのイオン化がどのように空間的に進行するのかについて、解析的モデルをたてて、計算を行った。このような活動銀河核は、宇宙が誕生して数億年の時代に最初に形成されたであろうブラックホールにガスが降着することで生まれたと考えられ、そこからの紫外線放射は銀河間物質のイオン化に大きな役割を果たすことが期待される。 続いて、初期天体形成に非常に大きな影響を及ぼすと考えられる宇宙磁場がどのように形成され、そして発展していったのかについて、いくつかの仮説をたて計算を行った。まず、宇宙磁場が宇宙が誕生した直後に生成された場合について、磁場が膨張宇宙の中でどのように発展していったのかを、数値計算に基づく非線形過程を考慮して詳細に計算し、磁場の存在が宇宙マイクロ波背景放射やその偏光成分に及ぼす影響を調べた。続いて、宇宙磁場が密度ゆらぎの二次成分によって生成される可能性を見つけ、具体的な数値計算を実行した。その結果、ごく弱い磁場ではあるが、確かに密度ゆらぎによって、銀河や銀河団に対応するような大きなスケールの磁場が生まれることを示した。これまで考えられてきた様々な磁場の生成メカニズムに比べて、宇宙に実際存在している大規模構造を生み出した密度のゆらぎによって、きわめて自然に磁場が生成される、ということがこの新しい機構のユニークな点である。
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