内定が平成17年10月に通知されたため、平成17年度は、当初予定していた4月からのスタートではなかった。実質的な研究期間が約3ヶ月と短かったため、申請時のもともとの計画とは異なり、重点項目を以下に示すものに絞って研究開発をおこなった。 B中間子の3体崩壊を用いたCP非保存の新しい測定法の発展をめざし、新しいアイディアを出すことを試みた。申請者が提案した「共鳴増幅法」をより系統的に研究し、すでに論文発表しているB+→φφK+を使った方法の他に有用なモードがないかどうかを調べた。特に、B0→φφKsという崩壊において、時間に依存するCPの破れと共鳴増幅の両方が存在する場合の現象は未開拓の分野なので、重点的に研究をおこなっている。B0→φφKsとB+→φφK+の両方を組み合わせ、更にSU(2)などのフレーバー対称性を用いることにより、標準模型の不定性の少ない探索が出来る可能性を追求している。 又、GEANTに基づいたシミュレーションプログラムの準備として、ストレージシステム(RAIDシステム)つきのワークステーションを購入し、整備をおこなった。 更に、未知の素粒子とそれに起因するCP非保存をB中間子で実験的に探る上で必要な新しい崩壊点検出器の試作機について、ビームテストをおこない、性能を評価した。その結果、APV25という新しいパイプラインチップを用いた読み出し方式が、高い輝度の電子・陽電子衝突型加速器における実験において有用であることを確かめることができた。特に、3つ以上のタイムスライスを続けて読み出して波形情報を得ることを試み、高い時間分解能を得ることが可能であることを確かめた。
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