研究課題/領域番号 |
17540281
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
萩原 薫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50189461)
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研究分担者 |
神前 純一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (60169787)
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キーワード | 散乱振幅の自動生成 / MadGraph / HELAS / 超対称性 / ゲージボソンフュジョン / LHC / リニアコライダー |
研究概要 |
本研究の目的は、最高速の散乱振幅自動生成プログラムMadGraphを超対称性を持つ素粒子模型に対応可能なプログラムに発展させ、LHCと将来のリニアコライダーの物理に応用することである。その第一段階として、まず、最小超対称性標準模型(MSSM)の最も主要な部分(スカラーの4点相互作用を除いた部分)のプログラムを完成させ、試験版を公開し、且つ、LHCの物理に対する具体的な適用の検討を開始すること、そして、本科学研究費を使用して購入した高性能ワークステーションに、Super-MadGraphの試験版を移植し、Super-MadGraph用に改良されたHELAS IIIパッケージを完成させ、そのマニュアルをウエブ上で公開することまでが、本年度の目標であった。 この内、物理に関する研究は計画以上のスピードで順調に達成された。まず、主要項を全て含んだSuper-MadGraphの試験版が完成し、それを用いてLHCに於ける弱ゲージボソンフュジョン過程でのカラー荷電を持たない超対称性粒子対生成シグナルとそのバックグランドの評価を完成させた。結果は、投稿論文として、専門誌Physical Review Dに掲載された。 また、同様の性能を有する他の独立なプログラム、SharpaとWhizzardとの定量的な比較を行った論文を完成させ、それも専門誌Physical Review Dに掲載された。 LHCの物理への応用に関する上記2論文が計画よりも早く完成したのは、この物理に関する国際的関心の高さによる、国際競争の成果である。一方、我々のワークステーションへのSuper-MadGraphの移植が今年度の末に成功したが、HELAS IIIパッケージを完成させ、そのマニュアルをウエブ上で公開することは、次年度の課題として持ち越された。 2006年10月18日から27日までの10日間、KEKに於て、HELASとMadGraph、そして散乱事象生成プログラムMadEventの講習会を開催した。新しい物理模型をユーザー自身がMadGraphに導入できる枠組みを準備している、ベルギーのLauvin大学、Maltoni教授のグループの大学院生、M.Herquet氏、MadEventとパートンシャワープログラムPythiaを用いてLHCでの多ジェット過程のシミュレーションを行っている米国SLACのJ.Alawall博士、そして、LHCでの弱ボソン衝突過程に対する量子色力学の輻射補正研究の若手第一人者ドイツKarlsruhe大学のB.Jaeger氏の3名を講師として招き、萩原、神前と合わせて5名の講師による集中講義を、20数名の大学院生と博士研究員、が聴講した。この講習会の参加者が、今後のLHCの物理研究の中心メンバーになることを期待している。
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