○SrTi^<16>O_3(STO16)とSrTi^<18>O_3(STO18)における量子常誘電状態の光散乱実験 STO16において0〜40Kの温度範囲で発現していると考えられている量子常誘電状態で、そして横波音響フォノンよりも低い振動数領域で、"ブロード・ダブレット"と呼ばれる励起(BD)が観測されている。本来、この周波数領域では素励起は存在できないので、その起源を巡って多くの研究者の注目を集めている。第2音波が起源であるとする仮説があったが、我々は光散乱実験にて、その仮説が間違いであることを実証した。また、STO18はTc〜25Kで強誘電体相転移を起こすが、25〜40Kまでの温度範囲だけでBDが存在することを見いだした。これは量子常誘電状態が実現している温度範囲が強誘電体相転移のために狭まったことを示唆している。さらに、STO18では横波音響フォノンがTc以下の温度で、その周波数を半減し約20KでBDに極めて似た光散乱スペクトルを与えることを発見した。この発見から、STO16で観測されるBDの起源は"量子常誘電状態で存在する局所的強誘電体領域内を伝搬する横波音響フォノン"である可能性が高いと結論づけた。 ○ダイヤモンドアンビル・セルによる高圧光散乱実験 STO18に静水圧を印可してゆくと強誘電相がなくなる。これに伴い、量子常誘電状態が存在すると思われる温度範囲(25〜40K)が0〜40Kまでに拡大し、BDがこの誘起された量子常誘電状態(0〜25K)で現れると予想している。現在、4.5GPaの圧力下で40Kまでの光散乱スペクトルは得ているが、さらなる温度低下については今後の課題である。
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