研究概要 |
量子常誘電体KTaO_3およびSrTiO_3において,パルス光伝導法により磁気抵抗移動度を100K以下の低温で計測した.移動度の温度変化は,従来の発表されているホール移動度と同様な値となり一致が見られた.試料自身をブロッキング電極にする方法を考案して,これにより,誘電率の大きな試料に高電界をかけて光伝導を計測するのに成功した.試料内部に電子が励起されるように長波長の光を用いた測定で,4.2Kの低温で電界強度依存性を測定すると,比較的低電界に於いて非線形電気伝導が開始されるのが観測された.SrTiO_3においては,高電界において電子のドリフト速度が飽和して一定になり,ストリーミング伝導が起きることが分かった.このとき,電子の運動エネルギーを格子振動の周波数に対応させると,強誘電性ソフトフォノン周波数と一致することが分かった.一方,KTaO_3においてはドリフト速度の飽和は見られず,高電界になっても速度は増加し続けた.同じ量子常誘電体でも,電子と強誘電性ソフトフォノンの相互作用はSrTiO_3で大きく,KTaO_3で弱いと推定される.このことはSrTiO_3は超伝導体になり,KTaO_3は超伝導体にならないことに対応している. 励起光の波長を短くして試料表面のみで光伝導を観測すると,SrTiO_3のばあい,従来からいろいろな異常現象が観測される温度に一致して移動度の温度変化に異常があらわれるのが観測された. SrTiO_3について良質の単結晶作製をめざし,浮遊帯域法を試みた.ベルヌーイ法による単結晶に比べエッチピット密度の小さな,大型の単結晶を作製できたが,現段階では磁気抵抗移動度はかえって小さく今後,熱冷却速度の調節,アニール条件の最適化等を行い,より良質の試料作製を試みる.
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