研究概要 |
本研究の目的は、磁場中の物質(誘電体、半導体、金属)にたいし偏光平面波光を入射させるときの光の偏光面回転(Farady回転)を、通常の一様な物質でなく、周期的な配列によって特徴付けられるフォトニック結晶(PC)を用いて、回転の大きさを増強させたり、入射波の方向を磁場でコントロールしたりする可能性を理論的に示し、定量的に大きさを見積もることである。このために、狙った成果は以下の3つである。(a)まず孤立した単独の球形物質に対して磁場をかけた状況下で入射平面波の振る舞いを理論的に解明し、(b)磁場がかかったPC中での光子のハミルトニアンによる定式化を完成させ、(c)ついで現実のPCに対して(a),(b)を数値的に応用する。以下、(a)(b)(c)について述べる。 (a)は、完全に達成した。(b)は、光アンダーソンモデルのパラメターの決定が完了して球における仮想束縛状態の、束縛が強い場合のハミルトニアンは完成した。しかし、角運動量指数が小さい場合に、状態密度には明白な鋭いピークが現れているにもかかわらず、得られた定式化ではカバーできない場合が生じることがわかった。この意味で(b)は半分しか達成されなかった。この問題で、本研究課題の難しさと今後の研究の狙いが絞れた。この理由で、(c)にまで課題研究を進ませることができなかった。しかし、(c)の代わりに、(d)フォトニック結晶におけるスミス・パーセル放射の実験と理論の不一致の解明、という課題に集中的にエネルギーを注ぎ、ここ、5、6年頭を占めていた問題が完全に理解され、実験と一致する理論のスペクトルを得るという成果を挙げた。総じて、狙った目標の7割5部の達成度であった。
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