研究概要 |
遷移金属電極とカーボンナノチューブ導線との接合部の構造と電気的性質(電子輸送現象)を理論的に明らかにすることを目的として,本年度はその第1段階にあたる下記の計算を行い,TiCとカーボンナノチューブ(アームチェア型(3,3)SWNT)接合部の構造を求めた。 1.TiCクラスター(Ti_<13>c_<13>)+SWNT(C_<30>)孤立系についてのLCAO-GGA密度汎関数計算 2.TiC(Ti_<19>C_<25>)+SWNT(C_<30>)周期系についてのGGA密度汎関数バンド計算 3.(比較のためのカーボンナノチューブ,TiC単体の計算) その結果,接合部の構造について下記の結果を得た。 1.接合部において,TiCのC層とSWNTとの整合性をとるためにSWNT接合部近辺の半径が5%程度増大する。 2.TiCの接合部2層の構造が大きく変化し,SWNTの中心軸上にあるC原子がTiC結晶側へ大きく沈む。 3.TiCの結晶構造をNaCl構造に固定した場合,接合部C原子の電荷がSWNT側に移動するが,構造を最適化し上記2つの構造変化が起こった後は,TiC各原子の電荷は±1に近づく。 現在,より大きな径のSWNTについて接合部の計算を行い,SWNTのサイズ・構造の違いによる接合部の構造の違いを明らかにすることを試みている。 さらに,TiC+SWNTの構造にhcpまたはfcc Ti結晶を接合させた系の第1原理計算を行う準備(Ti結晶とTiC結晶の間の接合部のモデル化等)を行っている。また,得られた接合部の構造を基にして,タイトバインディング法による電子輸送計算の準備も行っている。
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