研究課題
光子から電子スピンへの量子状態転写に際して、その有効性を妨げる要因の一つである電子正孔交換相互作用について、シュミレーションを含めた解析を行い、転写の純粋度、忠実度を1に近くするための条件を考察した。その結果、正孔の引き抜き時間を電子正孔交換相互作用の逆数よりも短くすることが主要要件であることを明らかにした。量子ドットにおける単一電子スピンの緩和について研究した。最低エネルギー準位のゼーマンダブレット間の縦緩和について、1フォノン過程と2フォノン過程の競合の様相を明らかにした。Kroutvarらの実験に則した解析により、実験データのない低磁場側での縦緩和時間を定量的に予言した。電子スピンのデコヒーレンス時間については、double-time Green関数を用いた理論を定式化した。これを用いて、最低エネルギー準位のゼーマンダブレット間のデコヒーレンス時間を評価した。Steelらの実験値は不均一ひろがりを含むT2*になっているため、理論値より数桁短いことを明らかにした。結合量子ドットにおける励起子の位相緩和の理論を定式化した。それを用いて位相緩和定数のドット間距離依存性及び温度依存性を明らかにした。励起子のエネルギー準位構造がドット間距離に対して敏感に変化するため、位相緩和定数も複雑なドット間距離依存性を示す。一方、温度依存性は、単一ドットの場合と同様な単純な振る舞いを示す。これらの結果を実験と比較し、定性的な一致を得た。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
Phys.Rev.B Vol.72
ページ: 035306
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Appl.Phys.Lett. Vol.87
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