研究概要 |
(1)フェムト秒時間分解ポンププローブ干渉法により、チタン酸ストロンチウム結晶の光キャリアが自由状態にあり,かつ非常に長い寿命を持つことを明らかにした。生成される光キャリアの寿命は、干渉縞を得るために用いたプローブパルス対の時間間隔(90ps)よりも非常に長く、この実験だけから光キャリアの寿命を求めることはできなかった。 (2)タングステン酸鉛結晶の光電流には異なる温度依存性を示す二つの成分が寄与していることを明らかにした。これらの成分は、基礎励起によって形成されるキャリア、および欠陥の励起によって発生するキャリアである。欠陥励起に起因する光電流成分の励起スペクトルは緑発光(G(II)帯)の励起スペクトルと一致することを明らかにした。 (3)透明領域に遷移をもつ不純物、あるいは欠陥に起因する光キャリア生成を明らかにするために、透明ブロッキング電極を用いた光電流測定を行った。この方法による光電流の励起スペクトル測定により、通常用いられる表面電極法では観測できない光電流の励起ピークを透明領域で見いだした。さらに、ポラリティを選ぶことにより、正孔捕獲中心と電子捕獲中心を弁別できることを示した。 (4)光照射下でアナターゼ型二酸化チタン交流伝導度測定を室温で行い、光電流に電場周波数(f)に依存しないDC成分とf0.7に比例して増加する成分の二つがあることを明らかにした。周波数に依存する成分はバンド端(3.2 eV)で鋭い立ち上がりを示すが、DC成分はバンドギャップ以上で徐々に強度を増し、3.8 eV付近にピークを持つことがわかった。この結果は、アナターゼ型酸化チタンを基礎励起すると、バンドキャリアとポーラロンが形成されることを示し、ポーラロンの収量はバンド端付近で高く、バンドキャリアはバンド端よりも高エネルギー側で効率よく形成されることを示す。
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