研究概要 |
光励起状態下での動的構造相転移は、結晶内の原子の非調和現象と深く結びついている。そこで、改良型格子力学計算により温度における精密なモード解析を行い、光励起状態における歪んだペロブスカイト構造結晶(XGaO_3結晶(X=Nd,La))のフォノン分散曲線解析を行う。さらに、改良型格子力学計算結果とラマン分光及び誘電物性実験結果を比較することにより、Librationalモードに対する非調和協力現象のオリジンを解明し、この結晶構造における温度誘起相転移や熱膨張異常をこの観点から研究することである。 本年度は、(1)XGaO_3結晶(X=Nd,La)に関するフォノンモードラマン散乱の温度依存性の実験、(2)改良型格子力学計算における斥力ポテンシャルモデルと(3)(2)のモデルを用いたフォノン分散曲線解析を行った。 (1)については、東北大学多元物質科学研究所にて行った。(2)については第一原理計算コードを使用して、XGaO_3結晶(X=Nd,La)のエネルギー極小条件下の原子座標と電荷分布を正確に求めた。これらの結果を使って、改良型格子力学計算における斥力ポテンシャルモデルを求めた。(3)については、(2)の方法を用いてXGaO_3結晶(X=Nd,La)を含む種々の構造の酸化物結晶に関するフォノンの分散曲線解析を高速計算機により行った。 その結果、NdGaO_3結晶の赤外活性フォノンについてAnharmonicityに関して以下の知見を得ることに成功した。500cm^<-1>以上のモードについてはdecay processが支配的で、290cm^<-1>以下のB_<1u>。モードについてはGaO_6の八面体格子振動の他にNdの振動も顕著になり、scatteringとdecay processが支配的になっていることである。この結果の詳細については、Journal of the Spectroscopical Society of Japanに公表した。一方、LaGaO_3結晶の回転格子振動モードの非調和性についても解析し、ラマン分光実験との比較を行うことにより、phonon dispersion relationsとの関係を調べた。この結果の詳細については、日本物理学会年次大会等において発表を行った。
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