研究課題
SrTiO_3やKTaO_3等の3次元ペロブスカイにおいて、最近、発見された光誘起「超常誘電性」相転移を対象にして、これまでとは全く異なる、新しい非線形ポーラロン理論に基づき、大規模数値シュミレーションを実行し、この非平衡相転移の微視的機構を理論的に解明した。この光誘起「超常誘電性」相転移に関し、現段階までに観測されている事実は、以下の4点である。(a)4eV付近の紫外光で線形励起すると、これらの物質の準静的誘電率は10^3〜10^4程度、巨視的に増大する。(b)酸素の2p軌道から、金属カチオン(Ti^<4+>、Ta^<5+>)の3d軌道へ、電子が光励起され、同時に金属カチオンの周囲の空間反転対称性は、巨視的に消失する。(c)但し、完全な強誘電的長距離秩序が実際に凍結して現れるには到らない。(d)更に、光励起と同時に、高い移動度を有する負の荷電担体が発生し、この物質の電気伝導度は急激に増大する。これらの状況から、本研究では、光で生成した3d伝導帯電子が、この物質に固有の、双極子モーメントを有する強誘電型ソフト(TO)・フォノンと、線形ではなく、2次で非線形に結合し、超常誘電性ラージ・ポーラロンを形成すると考えた。このラージ・ポーラロンは、言い換、えれば、電子を内包し、不断に揺動しつつ伝導する強誘電性分域(ドメイン)でもある。従って、本研究では、この超常誘電性ラージ・ポーラロン理論により、大規模数値シュミレーションを実行し、この非平衡相転移の微視的機構を理論的に解明した。この理論による計算結果は、上記実験結果ともよく整合する。
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