本研究では、層状化合物NbSe_2で構成されたナノチューブにおいてSTM/STSを行った。NbSe_2ナノチューブ試料は気相反応法により作成された。劈開したグラファイト(HOPG)上に、2-プロパノール溶媒中で超音波分散させたNbSe_2ナノチューブを滴下することによりSTM/STS測定用の試料を準備した。 室温でのSTM像から、300-2000nm程度の長さのNbSe_2ナノチューブが観測された。そのほとんどは長さが600nm以上で直線状である。これらのナノチューブの径は2-50nmと見積もられた。このうち、径が10nm以下の細いものは単層NbSe2ナノチューブ、それ以上の太いナノチューブは多層であると考えられる。 また、単層カーボンナノチューブではよく見られるバンドル構造がNbSe_2ナノチューブにおいても見出された。走査プロファイルからは、バンドルの径は50-100nm程度であり、径が約2nmの単層NbSe_2ナノチューブ数100本から構成されていることがわかった。さらに、1本の単層NbSe_2ナノチューブが2本に分岐した構造、いわゆるY-ジャンクションが見つかった。 室温でのSTM測定ではNbSe_2ナノチューブの原子配列を確認するには至らなかったが、4.2K以下の低温において単層NbSe_2ナノチューブの鮮明なSTM像を得ることに成功した。この結果によりNbSe_2ナノチューブの原子配列が判別され、カイラル角が求められた。これと走査プロファイルから求めた直径からNbSe_2ナノチューブのカイラル指数(螺旋度)が初めて決定された。その結果、今回調べたNbSe_2ナノチューブについては、ナノチューブごとにカイラル角も含めた螺旋度が異なることがわかった。また、いずれもが螺旋度の対称性の低いカイラル型であることが明らかになった。
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