研究概要 |
本研究では、(1)「電荷秩序相」を加圧下で抑えると「超伝導相」となる新規有機超伝導体β-(DMBEDT-TTF)_2PF_6およびその類塩物について、広い圧力範囲で伝導性、磁性を測定し、(2)「チェッカーボード型電荷秩序相」と「超伝導相」の競合・共存に関する電子相図を完成し、(3)両相の発現機構を明かにすることを目指した。平成18年度は、有機伝導体の物質パラメーターを変化させた圧力下の伝導率、磁化率測定を行って、有機伝導体における電荷秩序と超伝導の関係を探ることで、成果は以下のとおりである。 (i)有機伝導体β-(meso-DMBEDT-TTF)_2PF_6の周辺物質の作成、結晶・バンド構造の決定と物性測定 新規有機超伝導体β-(DMBEDT-TTF)_2PF_6の周辺物質を探索したところ、六配位八面体アニオンでは、同型のβ-(meso-DMBEDT-TTF)_2X(X=AsF_6,SbF_6,TaF_6,NbF_6)を、四面体アニオンでは、β類似のドナー配列で4倍周期のλ-(meso-DMBEDT-TTF)_2X(X=FeCl_4,GaCl_4)を得た。X線結晶構造解析、それに基づいたバンド計算を行い、前者のβ型塩では、アニオンの増大にしたがって、化学的負圧が印加され、バンド幅がわずかに減少し、二量化の程度が弱まることが計算されたが、常圧の伝導性、磁性はPF_6塩とほぼ同じ振る舞いを示した。また、後者のλ型塩では、前者より二量化の程度が大きく、上部と下部バンド間にギャップが開いていることが計算され、伝導性は室温で数Scm^<-1>の半導体と電子相関を示唆する振る舞いを示した。 (ii)有機伝導体β-(meso-DMBEDT-TTF)_2PF_6の電荷秩序と超伝導対称性の理論的計算 PF_6塩を、二量化の程度が弱い格子と仮定して、拡張ハバードモデルを用いて理論解析したところ、チェッカーボード型電荷秩序が、温度を変数としてリエントラントで表れ、電荷揺らぎの超伝導の対称性は、三重項と一重項の競合であることが、明らかとなった。
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