研究概要 |
3次元ペロブスカイト型コバルト酸化物のLaCoO_3は、温度の上昇とともに約90Kで低温の低スピン状態(t_<2g>^6e_g^0,S=0)から高温の中間スピン状態(t_<2g>^5,e_g^1,S=1)に転移することが知られている。さらに温度を上げると、約600Kで絶縁体(低温)から金属(高温)的振る舞いに変化する温度誘起の絶縁体-金属転移を示す。Co酸化物では、強い電子相関の下でのフント則結合と結晶場分裂との競合が重要な役割を果たしていると考えられているので、その効果を記述できる簡単化した模型として2軌道ハバード模型を考え、空間次元無限大で厳密となる動的平均場理論を用いて調べた。原子当たりの電子数が2のハーフフィルドにおいて、モット絶縁体とバンド絶縁体を含む金属絶縁体転移の相図を求めた。特に、LaCoO_3に対応するパラメータは、モット絶縁体、バンド絶縁体、金属の3つの相境界付近に存在し、スピン状態転移や絶縁体-金属転移が実現することが理解された。また、重い電子超伝導を示す充填スクッテルダイト化合物PrOs_4Sb_<12>におけるPr^<3+>(4f^2)イオンの結晶場準位は、基底状態が1重項Γ_1、第1励起状態が3重項Γ_4^<(2)>であることが知られている。このような1重項-3重項の結晶場状態をもつf^2周期系の重い電子状態を、2軌道周期的アンダーソン模型に基づいて、動的平均場理論を用いて調べた。有効質量が100倍を超える重い電子状態は3重項基底状態の場合に限られるが、1重項基底状態の場合でも3重項励起エネルギーが小さいときは、実験で観測されている有効質量が10〜100倍程度の重い電子状態が実現することがわかった。
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