研究課題/領域番号 |
17540317
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大野 義章 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40221832)
|
研究分担者 |
奥西 巧一 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30332646)
|
キーワード | コバルト酸化物 / 熱起電力 / 三角格子 / 強磁性スピン揺らぎ / 金属絶縁体転移 / フラストレーション / 電荷秩序 / 軌道秩序 |
研究概要 |
層状コバルト酸化物Na_xCoO_2はCoO_2面が2次元三角格子を形成して幾何学的にフラストレートしており、またフェルミ面を切るバンドが3個のd(t_2g)軌道から構成され、多軌道、多バンドの特徴を持つ。本研究では、Coのd軌道5個とCo面の上下にあるOのp軌道6個を全て考慮に入れ、バンド計算を再現する現実的な2次元三角格子d-p模型に基づいてCoO_2面の電子状態を調べた。特に、x>0.75では面内強磁性・面間反強磁性転移(T_c=22K)を示すことに注目して、熱起電力や電子比熱係数γに対する強磁性スピン揺らぎの効果を議論した。相互作用としてコバルトのt_2g軌道における軌道内クーロ相互作用U、軌道間クーロン相互作用U'、フント則結合J、ペアトランスファーJ'を考慮し、スピン揺らぎや軌道揺らぎを取り入れるために、軌道自由度がある場合の乱雑位相近似(RPA)を用いた。その結果、電子比熱係数γはx〜0.75に向けて急激に増加することや、x〜0.75で観測される巨大な熱起電力の温度依存性など、実験を説明する結果が得られた。また、この物質はx=0.5で、室温以下で実現するNaの1次元整列のもとで、面内反強磁性(T_c1=87K)と金属絶縁体転移(T_c2=53K)の興味ある2段転移を示すが、特に後者の起源については未だ明らかにされていない。そこで本研究では、上記の現実的な模型に対してNaイオンの1次元整列の効果をCoの原子準位の変化として考慮し、Hartree-Fock近似の範囲内でこの相転移を議論した。その結果、Na整列の効果によってフェルミ面のネスティングが増加し、フラストレーションにより抑えられていた反強磁性がT_c1で実現すること、またT_c2において反強磁性秩序に加えてさらに軌道秩序と電荷秩序が重ねて起こり、絶縁体に転移することが分かった。
|