研究概要 |
PrPb_3の反強四重極子秩序状態における増強核磁性秩序の磁気・スピン構造の解明を行うために,今年度は静磁化測定による磁気異方性測定,新しい大型核断熱消磁冷凍機の整備,SQUIDを用いない多軸交流帯磁率測定装置の開発を行った。 静磁化測定は,これまでに測定した[110]方向に対して,本研究課題では新たに[100]方向に磁場0.94および6.21mTを印加し最低温度1mKまでの温度領域で測定を行った。その結果,反強四重極子秩序状態における^<141>Prの核磁気モーメントは約5mKで反強磁性転移を示し,常磁性状態および反強磁性転移温度は磁気異方性を示さないが,反強磁性秩序での磁気異方性および,[110]状態における帯磁率の磁場依存性の存在を初めて明らかにした。この結果は,第24回低温国際会議および2005年超低温国際会議で報告した。 新しい大型核断熱消磁冷凍機は,100mKにおける冷却能力2mW,最低到達温度4.5mKの大型希釈冷凍機と,9T超伝導磁石による磁場中有効93モルの核断熱消磁装置から構成し,白金NMR温度計・ヘリウム3融解圧温度計を用いて性能評価測定を行った。その結果,最低温度約400μK,残留熱流量約10nWであり,1mK以下の低温保持時間1ヶ月以上であることを確認した。 SQUIDを用いない多軸交流測定装置は試料コイル4ヶ,補償コイル1ヶの計5ヶの2次コイルと,交流磁場用1次コイル,静磁場印加ソレノイド,およびニオブ・ミューメタルの磁気シールドから構成し,同時に複数の試料の帯磁率を測定可能である。本年度は,インジウムおよびガドリニム化合物を標準試料として,製作した多軸交流測定装置の基本性能評価を2Kまでの温度領域で行い,帯磁率測定精度等がほぼ設計値に従うことを確認した。現在,この装置を大型核断熱消磁冷凍機に設置し超低温領域での測定準備を行っている
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