研究概要 |
PrPb_3の反強四重極子秩序状態における増強核磁性秩序の磁気、スピン構造の解明を目的に,磁化測定によりPrPb_3は0.4K以下の反強四極子秩序状態において^<141>Prの核磁気モーメントが反強磁性秩序状態に転移すること,常磁性状態および反強磁性転移温度は磁気異方性を示さないが,反強磁性秩序状態では磁気異方性および磁場依存性を持つことなどを明らかにしてきた。本年度は研究計画最終年度であることから,研究の発展を念頭に,日本原子力研究開発機構の目時グループと共同で核磁気秩序状態におけるスピン構造の直接測定に不可欠な超低温中性子回折測定用の核断熱消磁冷却ステージの開発を行い,また,磁気異方性の精密測定のためSQUID-NMR測定装置の製作を行った。 核断熱消磁冷却ステージは,1mK領域での冷却能力が優れた増強核磁性体PrNi_5を寒剤とし,希釈冷凍機との間の超伝導熱スイッチ,温度測定用3^He融解圧力温度計,熱リンク等から構成した。寒剤であるPrNi_5は良質な試料の購入が困難であるため,試作、試料評価を行い試料作成条件、方法の検討を行った。超伝導熱スイッチは材質としてインジウムを用い,熱伝導状態のON-OFF用ソレノイドを含めΦ25x51Lの小型化に成功した。熱リンク等は熱伝導性向上のため残留抵抗比500〜1000程度まで熱処理し金メッキ処理を施した。 SQUID-NMR測定装置は,これまでに開発したSQUIDを用いた静磁化、交流帯磁率同時測定装置を発展させ,SQUIDプローブを2ケ使用し外部磁場と平行および垂直方向の励磁、検知コイルを設置した。これにより,垂直、平行帯磁率の同時測定だけでなく,励磁磁場と検知信号を直交させたNMR測定が可能になった。これまでに液体ヘリウム温度での基本性能のテストを行い,周波数範囲0〜10kHz,分解能数pHで測定可能であることを確認した。
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