研究概要 |
分子内包カーボンナノチューブの特異な1次元物性を観測する段階で明らかになったデバイス構造内の特徴的な2つの部分の電子輸送について詳細に明らかにした。一方は,デバイスの電極と分子の界面の輸送特性(キャリア注入)であり,他方は,分子間伝導である。それぞれの輸送特性のキャリア濃度依存性を調べるために,電界効果トランジスタ(FET)構造を用いた。 電極から分子へのキャリア注入障壁は,分子がフラーレン,ナノチューブの場合とも,FETのゲート電圧,バイアス(ドレイン・ソース)電圧の印加に伴い減少する事が明らかになった。但し,この際の注入障壁高さは,モット・ショットキー関係から予測される値よりも1桁程度小さいものであった。これはショットキー障壁由来のキャリア注入障壁に界面準位が存在し,双方の効果が寄与していることで定性的に理解できることを示した。 カーボンナノチューブFETにおいては,電極から直接カーボンナノチューブを成長させる直接合成法によりデバイス作製を行い,直接合成法によるFETではキャリア注入障壁が小さいデバイスであることを明らかにした。この結果から,直接合成法は,接触抵抗低減のための処理を必要とせず,デバイス作製プロセスのみで接触抵抗が小さいデバイスを作製できる新しい方法として有用である事を示した。 分子間伝導においては,キャリア注入障壁と同程度かそれより大きなトラップ準位が伝導を支配していることを示した。
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