研究課題
交互積層型電荷移動錯体はドナー分子、アクセプター分子が交互に並んだ柱から成っており、中性相、イオン性相の二種の相が存在するという特徴を持つ。最近合成されたBEDT-TTF分子をドナーとする新しいタイプの交互積層型電荷移動錯体は、(BEDT-TTF)(ClMeTCNQ)及び(BEDO-TTF)(Cl_2TCNQ)は、二次元的相互作用の強いBEDT-TTF分子及びBEDO一TTF分子のために低温でのスピン-パイエルス転移が押さえられる。(BEDT-TTF)(ClMeTCNQ)の中性-イオン性転移の解析において、スピン・パイエルス転移温度が圧力に依存しないことを仮定していた。このことは、ESR強度(磁化率)がある圧力以上で飽和することに現れ、実際1.5GPa以下で観測されたが、さらに確認するためにさらに高圧下(現在可能な3GPa以下)での測定を行った。その結果、2.5GPaまで磁化率の大きさが変わらず飽和していることが確認された。(BEDO-TTF)(Cl_2TCNQ)において、圧力下ESRを用いて種々の圧力下でのスピン磁化率の温度依存性を測定した。Q-、W-バンドESRの結果と合わせ解釈することで、圧力-温度相図を得た。この物質のスピン系は8GPa以下で3次元的スピン気体、10GPa以上で1次元スピン液体として振る舞うことがわかった。有機電荷移動錯体(BEDT-TTF)_2ICl_2は(BEDT-TTF)分子がダイマーを作り、2次元面を形成している。常圧、22Kで反強磁性転移を起こすMott絶縁体であるが、8.2GPa以上の圧力下で有機導体として最高の転稼温度14.2Kで超伝導転移を示すことから注目されている。常圧での電子状態がどの様に金属的状態に変化するかを圧力下ESRを用いて調べた。現在使用しているピストンシリンダー式の圧力セルは3GPa以下の圧力しかかけられないので、さらに高圧(3GPa〜10GPa)での測定のために、キュービックアンビルセルを利用したESR装置の開発を進めた。アンビルの一対に直接静磁場用コイルを巻き付けクライオスタット内に収納するという点が特徴である。
すべて 2007 2006
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