研究概要 |
購入した高圧配管部品をもとに、最高温度650℃、最高圧力1500気圧の水熱合成装置を組み立てた。それを元に種々の非ペロブスカイト型酸化物の合成を試み、物性測定を行った。主な成果を以下にまとめる。 1.トンネル構造を持つモリブデン酸化物の相転移 ホランダイト型酸化物は遷移金属酸化物のネットワークの間にトンネル状の隙間を含む構造をしている。本研究では遷移金属としてモリブデン隙間にルビジウムを含む新規物質Rb_<1.5>Mo_8O_<16>の合成に成功した。磁性および電気伝導性の測定により、この物質の電子状態は、MoO_6八面体4つからなるクラスターの分子軌道により支配されていることが明らかになった。また、この物質は200K以下で伝導性と磁性の一部が失われる相転移を示すことがわかり、詳細な低温X線構造解析の結果、その相転移は結晶格子の対称性の低下を伴っていることが明らかになった。このことから、低温相ではクラスターの電荷に不均一性が生じていることが予想される。この研究成果については、J.Phys.Soc.Jpn.1月号(2006年)で発表した。 2.直交ダイマー構造を持つレニウム酸化物の物性 KSbO_3型構造を持つレニウム酸化物Sr_2Re_3O_9,La_4Re_6O_<19>,Pb_6Re_6O_<19>,Bi_3Re_3O_<11>を水熱法により合成した。このうち最後の物質は本研究で初めて発見したものである。これらの物質の構造を単結晶X線回折装置により求め、比較を行った。さらに磁化率と電気抵抗率の測定を行った結果、いずれの物質も基本的にはパウリ常磁性と金属的な電気伝導を示すことが明らかになった。Bi_3Re_3O_<11>は磁化率、電気抵抗率ともに50K付近で異常を示す。温度依存性の詳しい解析により、低温でスピン自由度の一部が消失していることが考えられ、その起源に関しては今後の研究で明らかにしていきたい。
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