研究概要 |
代表的な強相関系である遷移金属酸化物は、多様な磁性、高温超伝導、巨大磁気抵抗など、応用のみならず、物性物理学の基礎的側面からも興味深い性質を示す。これまで、比較的単純なベロブスカイト構造をもつ遷移金属酸化物に関して、わが国では精力的に研究が行われてきた。この分野をさらに発展させるためには、ペロブスカイト以外の物質も含めた新たな物質探索が欠かせない。本研究は、水熱合成法という特殊な合成法を中心とした手法を用いて、さまざまな非ペロブスカイト型酸化物の発見に成功した。当該年度に得られた成果を以下に記す。 1.新規ホランダイトロジウム酸化物の合成と磁性、導電性新規ホランダイト酸化物K_2Rh_8O_16,Rb_1.2Rh_8O_16の合成に成功した。磁性および導電性の測定により、これらの物質は金属的な電子状態を持つ事があきらかになった。さらに比熱の測定を行った結果、2に近いWilson比が得られた。この結果はこの物質は電子相関が非常に強い強相関金属であることを示す。 2.新規ルテニウムパイロクロア酸化物におけるスピングラス磁性の起源についての研究新規パイロクロアCa_2Ru_2O_7の合成に成功した。この物質は金属的導電性を示しながらも、局在スピンが一部存在し、それらが低温でスピングラスとしてふるまう。その起源を検討するために、アニールにより酸素欠損を導入した。その結果、一部4価になっているルテニウムのサイトが局在スピンを発生させていることが明らかになった。 3.新規鉄ホウ酸化物における特異な磁性新規鉄ホウ酸化物Fe_3B_7O_13(OH)の合成に成功した。単結晶を用いた精密な磁化測定の結果、この物質は磁場の方位に敏感な多段階の磁気相転移を示すことが明らかになった。 4.リチウムを含むルテニウム酸化物における多様な磁性Li-Ru-O三元系の様々な相の作り分けに成功し、スピングラスや低次元磁性などの興味深い磁性を発見した。
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