Bi系Co酸化物のBi2Sr2Co20x(BC222)の電子状態の低温STMによる評価を行った。その結果、幾つかの重要な知見が得られた。BC222はBi-0面で劈開するが、劈開面には2種類の超構造を伴うBiの格子が観測された。それぞれの超構造は、TEM観測の結果と一致し、これにより実空間上の変調パターンが確認できた。それに加え、Co-0に由来すると思われるストライプ状の構造も観測され、同時に状態密度には強く温度依存する擬ギャップ構造が現れることが明らかになった。擬ギャップは、温度低下と共に急激に成長する。これらは、何らかの秩序状態の形成により引き起こされた変化と考えられる。電気抵抗の変化からも予測される、CDWやSDWの形成と矛盾しない。 Bi系銅酸化物高温超伝導体のBi25r2CaCu208+xは、酸素量xを変化させることによりキャリア量を変化させることができるが、Tcの低いunderdopeの試料を作るのは困難であった。我々は、Bi/Sr比の制御や精密な酸素分圧制御を行い、dope量の非常に少ない試料の製作に成功した。低温STMにより試料の超伝導/擬gapを調べたところ、超伝導gap状の構造はほとんど消失していた。その結果、gapの空間分布における最小値がTcを決定するのではないことが判った。擬gap状態でも超伝導を担っていることは確実と見られる。また、Tcの2倍程度高い温度では、擬gapの不均一分布が非常に少なくなる傾向が見られた。以上は、擬gapの起源解明に対する重要な情報を与える。
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