CeRhSi3は反転対称性のない結晶構造を持ち、常圧では反強磁性体であるが、圧力により反強磁性を抑制していくと、超伝導を示す。 それ故、この化合物は次の二つの点で極めて興味深い。 1)超伝導が反強磁性から常磁性への量子相転移に関連していると考えられる点。 2)反転対称性のない結晶に発現する超伝導である点。 H18年度は、この物質について、磁場を磁化困難軸であるc軸に加えた交流磁化率、dHvA効果の測定を、30kbarの高圧力まで行い、実験的に以下の点を明らかにした。 1)圧力26kbar付近で超伝導転移温度は1.1K程度の最大値に達するが、その近傍の圧力下では上部臨界磁場が著しく高く30Tに達する可能性がある。 2)フェルミ面の圧力変化は常圧から30kbarまで連続的である。また、反強磁性状態でも常磁性フェルミ面上の大きなオービットが観測され、反強磁性秩序が出現してもフェルミ面がCe4f電子を含む大きなフェルミ面であることがわかる。 3)有効質量は基本的に圧力とともに単調にかつ緩やかに減少する。また磁場依存性が見られない。 4)超伝導混合状態におけるdHVa振動の振動強度の解析では、超伝導エネルギーギャップの影響が見られない。 2)と3)は他の研究グループによる同じく圧力による量子相転移を示すCeRhIn5に関する結果と、極めて対照的であり、CeRhSi3の反強磁性量子相転移には遍歴モデルが適切であると考えられる。 4)は超伝導ギャップにノードがある、あるいは、フェルミ面のシートごとに超伝導ギャップが異なることを示すように思われる。1)とあわせて反転対称の無い超伝導体の特異性を示すものかもしれない。
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