UIrは結晶の空間反転対称性を持たないキュリー温度46K、磁化容易軸[10-1]のイジング型強磁性体であり、この物質に圧力を加えると常圧のFM1相からFM2相、FM3相と3つの強磁性相を経て、磁気秩序が消失する。このFM3相のキュリー温度がゼロになる2.6〜2.7GPaの量子臨界点近傍で転移温度が0.14Kである超伝導を電気抵抗測定により発見している。 前年度までの残留抵抗比170の単結晶試料において観測された超伝導はそのマイスナー信号の体積分率は5%と非常に小さくバルクの超伝導とは言いがたかったが、今年度さらに高純度の残留抵抗比229の純良単結晶試料の育成に成功し、これを用いるとマイスナー信号の体積分率は19%まで増加した。さらにこの高純度単結晶試料を用いてP_<c3>近傍で電気抵抗測定を行い、超伝導上部臨界磁場H_<c2>の異方性を測定した。超伝導転移温度が最も高い圧力2.7GPaにおいて、H_<c2>(T)=H_<c2>(O)(1-(T/T_<sc>^2)の関係式からH_<c2>(O)を導出すると、_<μ0>H_<c2>(O)は[101]方向で約15mT、[10-1]方向で約32mTであることがわかった。 また今年度はUIrと同様な結晶構造を持つ物質の探索にも乗り出した。URhはこれまでその存在が知られていなかったが、アーク炉で多結晶試料を育成したところほぼ単相のURhが得られ、X線回折でUIrと非常に良く似た構造であることがわかった。
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