研究概要 |
スピネル型物質は、フラストレーションに起因してスピンや電荷の特異な秩序が見られる興味ある研究対象である。19年度はスピネル磁性体GeM_2O_4(M=Ni,Fe)の中性子散乱研究を中心に進めた。この系の特徴は、幾何学的フラストレーションに起因して、温度と磁場に対して幾つかの磁気秩序相が出現することである。この研究は磁気フラストレーション系におけるスピン-格子相互作用についての知見を深めるために役立つ。また、Niは軌道の自由度がないのに対してFeは軌道の自由度を持つために、系統的な研究は意義がある。 第一に単結晶を用いてGeNi_2O_4の中性子散乱実験を行った。この物質は逐次磁気相転移(転移点T_N1,T_N2)を示すが、T_N1以下ではカゴメ格子のスピンのみが反強磁性秩序化し、T_N2以下で三角格子のスピンも独立に反強磁性秩序化することを明らかにした[磁気ベクトルは両者ともに(1/2,1/2,1/2)]。また発現機構の考察を行い、第四近接相互作用が最も大きいことに由来することを示した。この研究は、スピネル磁性の中でもe_g軌道のスピンが示す特異な磁性に関する意義ある研究である。 次にGeFe_2O_4の中性子散乱実験を行った。先ず粉末回折実験を行ったところ、低温で反強磁性秩序を示し、磁気ベクトルがGeNi_2O_4とは異なる(2/3,2/3,0)を持つ構造であることを明らかにした。また、単結晶を用いて実験を行ったが、低温で短距離秩序しか見られず、現時点では結晶性に問題があると考えられる。今後、良質の単結晶を用いて実験を行い、粉末実験の結果と合わせて磁気構造を明らかにする必要がある。
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