研究概要 |
時系列データ解析を基礎とした非平衡熱・統計力学の帰納的構築に関する研究を行った。化学振動反応時系列データおよび企業の売上・利益時系列データの解析を行い有意義な結果を得た。また非平衡熱・統計力学についても理論的研究を進めた。 (1)熱力学における仕事についての揺動散逸定理を示した。すなわち仕事はエントロピー関数の時間偏微分の自己相関関数として厳密に表される。系が長時間相関を持つ場合、ヒステリス・ループの面積(仕事)に操作周期についてフラクタル・スケーリングが現れることを示した。長時間相関を持つハミルトニアン・カオス力学系による数値シミュレーションで検証した[論文1]。 (2)Bromate-Sulfite-Ferrocyanide(BSF)反応振動時系列データをParticle Filterを用いて解析することで、Rabai-Kaminaga-Hanazakiによる反応モデルを改良し、定常・振動の相図を定量的に検証することに成功した[発表1]。 (3)東証上場企業の売上・利益時系列データを解析し、自己組織化臨界現象としてのPareto分布を流入のあるときの安定固有超関数として解釈することで、経済系と物理系を共通の視点で捉えることができるようにした[発表2]。 (4)仕事についての不等式すなわち熱力学第2法則を、一般の非平衡初期状態についても、成立するように拡張することに成功した。同時に可逆な力学と不可逆な熱力学との関係について、ハミルトニアン・カオス力学系を基礎に解明した[発表3,4]。
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