研究課題/領域番号 |
17540347
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
初貝 安弘 東京大学, 大学院工学系研究科, 助教授 (80218495)
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研究分担者 |
丸山 勲 東京大学, 大学院工学系研究科, 助手 (20422339)
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キーワード | 幾何学的位相 / 量子液体 / ベリー位相 / 量子化 / 秩序変数 / 強相関電子系 / エンタングルメントエントロピ / 量子相転移 |
研究概要 |
ランダウ以来の相転移の理論によれば、古典的な物質相は局所的な秩序変数を用い対称性の破れの概念に基づき理解される。局所磁化により強磁性相が、局所的副格子磁化により反強磁性相が特徴づけられるわけである。一方、低次元量子系では、その強い量子ゆらぎならびに低次元性により、通常の秩序形成が強く妨げられ、対称性の破れを伴わず、それでいて極めて特徴的な物理相が存在し得ることとなる。フラストレートしたスピン系におけるスピン液体相、整数スピン鎖におけるHaldane相、量子ホール相、近藤絶縁体相等がその典型例である。これらの量子液体相の物理的理解を目指すとき、古典的な概念では不十分であることはほぼ自明である。 本研究においては以上の物理的背景のもとで幾何学的位相というもっとも量子的な概念を用い量子液体相、特に励起にエネルギーギャップを持つ量子液体相の特徴付けを目指す理論的枠組みを2つ具体的に考案し、その上で具体的な量子液体相に対して適用し、極めて有効な結果を得た。その一つは幾何学的位相の代表例であるベリー位相を用いて量子的な局所秩序変数を構成するものである。古典的観測量はエルミート演算子の期待値で与えられ、それ故ユニタリ不変であるが、ベリー位相は基底のユニタリ変換により2πの整数倍だけ不定であり決して古典的な物理量とはならない。特に物理系が時間反転対称性などの反ユニタリ対称演算をその対称操作として持つとき、一般には任意の値を取り得るベリー位相が0またはπという量子化値をとることを示しそれを用いて「量子的局所秩序変数」を構成し相分類、量子相転移の理論を完成させた。もう一つはエンタングルメントエントロピー(EE)なる新しい物理量であり、基底状態に関する純粋状態の密度行列を空間的に縮約することで基底状態の波動関数の空間的エンタングルメントを定量化するものである。このEEに対して量子系の幾何学的位相の直接の反映として量子液体相に特徴的な実効的なエッジ状態がEEに主たる寄与を与えることを明確に示した。
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