既に、Phys.Rev.Lett.88(2002)170404とAnn.Phys.312(2004)177-267において成果を発表した「量子揺らぎを非摂動論的に取り込んだ古典力学に基づくWKB法」を「量子揺らぎを非摂動論的に取り込んだ古典力学に基づく鞍点法」へ発展させる研究を実行した。この研究は着実に成功を収めて、現時点では、新しい鞍点法の定式化が終わり、さらに、いかなる鞍点法にとっても試金石となる適用例であるAiry関数に対する適用を行なった。この適用の結果として、複数の鞍点が接近している場合においても、新しい鞍点法は発散を持たないことが確認された。 ここまでの成果を公表するために、現在、論文を執筆中である。新しい鞍点法は、その内部で道具として、従来の鞍点法を用いる。ただし、従来の鞍点法を用いる状況としては、大変に込み入った状況を正確に扱わなければならない。そのために、まず、従来の鞍点法の大域的解析学の側面を完全に正確に記述するために、グラフ理論を全面的に用いて、従来の鞍点法を再構成した。この研究成果は、"A graph theoretic reformulation of traditional steepest descent method"という論文として公表予定である。さらに、このように再構成した従来の鞍点法を内部で道具として用いる我々の新しい鞍点法は、"The theory of divergence-free steepest descent"という論文として公表予定である。この1年間はこれら2つの論文を執筆することに注力した。それぞれ150ページほどの論文であり、執筆には時間がかかったが、後1ヶ月以内に執筆が完了する予定である。いましばらく、お待ちいただきたい。
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