研究概要 |
量子XXZ鎖およびXYZ鎖において出現するsl(2)ループ代数の無限次元対称性を研究した。量子XXZ鎖の異方性変数Δが特別な値の場合(対応する量子群の変数qが1の冪根の場合)にレベル交差が出現し、交差点では対称性が非常に拡大する。そして、格子長の指数関数で増大する異常とも言えるほどに大きな縮退度を導く。 前年度の研究の中で、ベーテ固有状態がsl(2)ループ代数の最高ウェイトをもつ固有ベクトルとなることを、数学的帰納法を用いてループ代数の無限個の関係式を証明して示した。しかしその一方、最高ウェイト表現がどのような場合に既約表現になるのかは実はまだ知られていなかった。実際、スペクトルの縮退次元はベーテ固有状態から生成される最高ウェイト表現の次元で与えられるので、与えられた最高ウェイト表現が既約表現かどうかの判定は縮退度の解析に必要不可欠である。このため本年度は、sl(2)ループ代数の最高ウェイト表現がどのような場合に既約表現になるかを研究した。そして、有限次元最高ウェイト表現が既約表現となるための必要十分条件をはじめて明らかにした。(SIGMA Vol.2(2006),Paper021) さらに、量子XXZ鎖において出現するsl(2)ループ代数の無限次元対称性が、カイラルポッツ模型のスペクトルの解析に役立つことを明らかにした。カイラルポッツ模型は2次元イジング模型を自然に拡張する重要な可解格子模型である。そのイジング的なスペクトルを特徴付けのためにある多項式が用いられてきたが、実はこれは高次スピン表現の量子XXZ鎖におけるsl(2)ループ代数に対するDrinfeld多項式に他ならないことを明らかにした。(Physics Letters A, to appear.)
|