研究概要 |
量子XXZ鎖は可積分量子スピン系を代表する重要な系である。その異方性変数Δが特別な値の場合(Δ=(q+1/q)/2とおいて、変数qが1のN乗婚あるいは2N乗根の場合)に対称性が非常に拡大し、ループ代数という無限次元の対称性をもつ。縮退度は非常に大きく、格子長の指数関数で増大する。 前年度の研究を発展させ、全角運動量演算子のz成分の値がNで割り切れるセクターにおいて、正規なベーテ固有状態がループ代数の最高ウェイトベクトルとなることを、数学的に厳密に証明した(J.Phys.A:Math.Theor.(2007))。また、昨年度から継続した研究の中で、ループ代数の有限次元最高ウェイト表現が既約表現となるための必要十分条件を明らかにし、論文を出版した(JSTAT(2007))。この二つの論文の結果、量子XXZ鎖におけるループ代数による縮退次元を求めるための基本アルゴリズムが完成した。この結果、平成17-19年度の本研究課題の最重要課題が達成された。 量子XXZ鎖のツイスト境界条件の場合にも、ループ代数の対称性が出現することを明らかにした。まず、ツイスト境界条件下でボレル部分代数の対称性を導いた。次に、ボレル部分代数の有限次元最高ウェイト表現を定義し、これが量子XXZにおいて出現することを示した。そして、一般的な数学的定理として、ボレル部分代数の有限次元最高ウェイト表現からループ代数の最高ウェイト表現が導かれることを証明した。この結果、量子XXZ鎖のツイスト境界条件の場合にも、ループ代数の対称性が存在することが明らかになった(RAQIS'07(2008))。この結果は、超可積分カイラルポッツ模型の研究に応用できる。 超可積分カイラルポッツ模型と冪零Bazhanov-Stroganov模型(NBS模型)の転送行列は互いに交換する。前年度の研究により、後者は量子XXZ鎖の高次スピン表現に対応し、sl(2)ループ代数あるいはそのボレル部分代数の対称性を持つ。本年度は、NBS模型においても、正規ベーテ固有状態からループ代数の表現が導かれることを示した。論文は近日中に投稿の予定(A.Nishino and T.Deguchi)。また、まだ論文は完成していないが、高次スピン表現に対応する可積分量子XXZ鎖の相関関数を組織的に求ある方法を開発した(Tetsuo Deguchi and Chihiro Matsui, in preparation)。この二つの研究成果を組み合わせることにより、超可積分カイラルポッツ模型の相関関数が組織的に導かれることが予想される。
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