平成17年度の研究目的は、我々が既に提唱しているフラットバンド(以下FB)構成法を使って具体的に今まで得られなかったFB電子系とFB格子系を構成して、その物理的な特性を調べることであった。 FR電子系については、先ず全てがFBとなるダイアモンド格子上の4準位系モデルを提案し、予備的計算から期待されていた逆アンダーソン転移をユニットセル数N^3(N=4〜10)の場合について、ランダムネスの強さWを変えながら数値的に調べ、エネルギー固有値の準位間隔分布の有限サイズスケーリングを調べることにより、また更に波動関数のマルチフラクタル構造の特性を表すf(α)のサイズ(N^3)依存性を調べることにより、無限系での転移として明らかにした。すなわち、このFBランダム系の電子状態は、ランダムネスが無い規則系では巨大縮重系であるが、無限小のランダム摂動が入ると強く局在し、ランダムネスの強さWを0から少しつつ増大させて行くと、W_<C1>で局在-非局在転移を起こし広がった状態になり、更にW_<C2>になるといわゆるアンダーソン転移(ランダムネスの増大による非局在-局在転移)を起こすことを明らかにした。この結果は従来のアンダーソン転移のパラダイムへの挑戦となるものであるので、論文「Inverse Anderson Transition caused by Flat Bands」としてPhys. Rev. Lett.に投稿し、両レフェリーから既にリコメンドを貰い、エディターからのOKの返事を待つ段階に至っている。 FB格子については、電子系とほとんど同様に調べることが出来るが、格子系特有の条件がバネ定数に付加されることと波動関数の自由度が増大することのため、FB出現条件の具体的な導出に時間がかかっている。光学フォノンに関しては既に2次元系を中心に成果を得ているが、音響フォノンに関しては部分的な結果を得るにとどまっている。
|