研究概要 |
平成18年度の研究目的は、我々が既に提唱しているフラツトバンド(以下FB)構成法を使って平成17年度に構成したFB電子系について、その物理的な特性を明確にし、更に格子系に付いてもその特性を明らかにすることであった。 FB電子系については、全てがFBとなるダイアモンド格子上の4準位系モデルについて、既に予備的な計算で予測されていた逆アンダーソン転移の存在をランダムネスの強さWを変えながら数値的に調べ、エネルギー固有値の準位間隔分布の有限サイズスケーリングと波動関数の∫(α)特性の系のサイズ依存性を調べることにより・無限系での転移として明らかにした。すなわち、このFBランダム系の電子状態は、ランダムネスが無い規則系では巨大縮重系であるが、無限小のランダム摂動が入ると強く局在し、ランダムネスの強さWを0から少しづつ増大させて行くと、W_<C1>で"系の乱れに起因する局在-非局在転移"を起こし広がった状態になり、更にW_<C2>になると通常のいわゆるアンダーソン転移(系の乱れに起因する非局在-局在転移)を起こすことを明らかにした。この結果は従来のアンダーソン転移の物理像に対する反例としてPhys.Rev.Lett.に掲載され、その詳細はJ.Phys.Soc.Jpn.に掲載された。 FB電子系の議論は原理的にはFB格子系にも適用できるが、格子系には長波長のフォノンは局在しにくいと言う特徴があるので、長波長の音響フォノンに付いては特別な注意が必要である。このため長波長の音響フォノンの分散曲線がフラットに漸近する格子系を新たに構築して、弱いランダムネスで局在するか否かを調べ、正常な固体のそれに比べて局在の性質が強いことを明らかにし、Int.Conf.on NANOMEC-06(2006,Bari)でその概要を報告した。
|