研究概要 |
本年度は3次元の相互作用していないランダム電子系のAnderson局在を,異なる6種類のモデルについて解析した。この問題は本研究テーマである,ランダム媒質中の光の伝搬を解析する基本となるものである。本研究によりAnderson転移における局在長の発散を特徴づける臨界指数が普遍的であり,系の詳細によらず基本的な対称性のみによることを示した。このことからAnderson転移における3種類の普遍クラスの存在を実証した。さらに擬1次元系の局在長に対するベータ関数を評価した。この結果から,金属領域と臨界領域では,有限サイズスケーリングの振る舞いは,ハミルトニアンの基本的な対称性に依存するが,強局在領域ではスケーリングの振る舞いは系の対称性にはよらないことが示された。これらの結果は2006年9月18日から22日にかけてブラジルのMaceioで行われた国際ワークショップの招待講演として公表された。 また,ランダム媒質中の光の振る舞いを解析するため,時間領域差分法(FDTD法)にもとづく数値計算をおこなった。誘電率の異なる物質が,周期的,フラクタル的,ランダムに配置された場合にどのように電磁波が拡散しているかを,系の中心部に波源をおき,Maxwellの方程式をFDTD法で解いて解析した。この拡散で得られた振る舞いを定量的に解析するため,電磁波に対する転送行列(Pendry and MacKinnon, Phys.Rev.Lett.69(1992)2772)の開発に着手した。
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