1995年にアルカリ金属原子のボーズーアインシュタイン凝縮(BEC)が実験的に実現して以来、BECの物性や原子波レーザーなどが盛んに研究されている。その中で、BEC系の非線形ダイナミクスの研究も大きなトピックスになっている。BECを回転させることにより量子渦が形成されることが発見され、多数の量子渦からなる渦格子も見つかっている。また、磁場により1次元的に閉じこめられたBECの中にソリトンやダークソリトンが観測された。これらの非線形励起はBECの平均場理論から導出されるグロスーピタエフスキー方程式あるいは非線形シュレディンガー方程式(NLS方程式)で記述されることが知られている。 今回、このさまざまな外部ポテンシャルや空間変調をかけたNLS方程式を数値計算しソリトンや渦運動に関していくつかの新しい結果を得た。それらの結果はフィジカルレビュー誌などに公表した。 BEC系にレーザー光を入射して干渉させることにより、さまざまな空間周期ポテンシャルを実験的に導入できる。これを光学格子と呼ぶ。さまざまな光学格子の中でソリトンや渦は多様な運動をする。 今回得られた、いくつかの成果を列挙する。 1.正方格子中に多数のソリトンや局在渦を並べてつくったソリトン格子や渦格子の安定性を数値的に調べた。 2.準周期ポテンシャル中にもギャップソリトンが安定に存在することを数値的に示した。 3.回転する光学格子内のソリトンの安定性を調べた。 4.非線形項を空間的に変調した系でのソリトン解を調べた。 5.局在した非線形項をもつ系に2次元ソリトンを見つけた。 6.2次元ダークソリトンが自発的に形成されるケースがいくつかあることを示した。 7.粘性のない複素ギンツブルグ-ランダウ方程式系で運動するソリトンやスパイラル解が得られることを示し、それらの間の衝突で何が起こるかを調べた。 これらの結果は主としてイスラエル、テルアビブ大学のBoris Malomed教授との共同研究でもある。
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