研究課題
基盤研究(C)
本研究では、溶融貴金属・ハロゲン混合系中での特異な貴金属イオン間相関をもたらす凝集機構を明らかにする目的で、第一原理分子動力学法に基づく計算機シミュレーションを行った。得られた主な研究成果は以下の通りである。1.溶融CuIの第一原理分子動力学計算を行い、Cu-Cu間には、従来考えられているようなクーロン反発相互作用だけではなく、電子を共有することによる引力的な相互作用が働いており、これが異常に短い正イオン間距離を与えていることを解明した。この共有結合的な相互作用にはCuの3d電子はほとんど関わっておらず、4s,4p電子が主に寄与している。2.溶融AgIに対して計算を行い、溶融CuIの結果と比較検討することにより、貴金属イオンが異なることによる溶融貴金属ハライドにおける凝集機構への影響を調べた。溶融CuIとの違いは、貴金属原子からヨウ素への電荷移動の大きさ、つまり、イオン性の強さである。溶融AgIの方が、電荷移動が大きくイオン性が強い。これに関連して、正イオン間の共有結合的な相互作用はAg-Ag間の方がCu-Cu間よりも弱く、Agの密度ゆらぎもCuに比べて小さいことがわかった。3.最近行われたX線散乱実験に対応して溶融AgIの構造と電子状態の圧力依存性を調べ、高圧においても異常に短い正イオン間相関は保持され、20GPa程度の圧力まではNaCl的な構造は現れないことを明らかにした。4.Ag_2Seの溶融相と超イオン伝導相に対して計算を行い、カルコゲン系においても、AgI、CuI等のハロゲン化物中と同様の特異な正イオン間相互作用が見られることを確認した。特に、超イオン伝導相では、Ag間の引力がAg同士の相関運動を引き起こし、これが融点以下での高いイオン伝導度の要因になっていることを示した。
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