平成17年度に引き続き1)1次元強相関電子系にみられる相転移に関する研究、および2)2次元古典格子模型の相構造に関する研究を行った。1次元量子臨界系を記述するガウス型固定点は同時に多くの2次元古典スピン系の臨界性をも記述する。従って例えば1次元量子スピン系に見られる現象と本質的に同等な振る舞いを2次元古典系に対しても見出すことができる。以下にその概要を研究論文2編に沿って纏める。 Phys.Rev. E73(2006) 035105(R) 三角格子上反強磁性イジング模型の基底状態は臨界的であり、それに対する様々な摂動効果が論じられてきた。我々は一様磁場の効果および空間的異方性の効果を定量的に取り扱った。一様磁場により系はBKT転移を起し秩序相へと変化する。我々はまずその転移磁場をレベルスペクトロスコピー法により正確に求めた。秩序相は所謂ストリング表示におけるストリング密度が2/3で非圧縮になっていることに対応している。一方、有効理論より空間的異方性はその密度を制御する化学ポテンシャルであることが分かる。我々は密度行列くりこみ群を用い非圧縮領域を求め系の大域的相構造を明らかにした。さらに1次元量子スピン系に見られる磁化過程との対応関係について議論した。 J.Mag.Mag.Matt. 310 (2007) 1119 1次元強相関電子系の中には競合する相互作用の為、2次元イジング模型の臨界性を示すものが幾つか知られている。π共役電子有機物質などに対するイオン性ハバード模型や電荷秩序系の(TMTTF)2Xなどに対する遷移積分交替をもつ1/4フィリング拡張ハバード模型などがその例であり、共にその電荷部分においてイジング転移を起すことが予言されていた。有効理論としては所謂double-frequencysine-Gordon場の理論が対応するが、我々はこれらの模型の低エネルギー励起を数値的に取り扱うことで転移点を求め、系の相構造を定めた。
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