平成20年度は、三体相互作用を持つスピン模型の有効理論を用いた研究、および反強磁性3状態ポッツ模型の交替分極場による臨界性のクロスオーバー現象の研究を行った。成果を論文ごとに纏める。 (1)J. Phys. A: Math. Theor. 41(2008)375001. 三体相互作用模型の有効理論であるベクトル双対サインゴルドン模型の性質を詳細に調べることで、中間相の臨界性や高温無秩序相および低温秩序相への転移を記述するくりこみ群方程式を導き出した。また相転移の際のマージナル演算子の持つ性質について詳しい解析を与えた。 (2)Phys. Rev. E77(2008)062101. 上の研究を引き継いで、特に高温無秩序相への連続転移について詳しく調べた。具体的には系の持つU(1)xU(1)対称性に適したスピンの長波長ツイストを導入することでヘリシティーモジュラスを定義し、更にMC法によるデータを有限サイズスケーリング法で解析することにより予想を確かめた。 (3)J. Phys.: Conference Series145(2009)012043. 上記にて議論された連続転移の起源となるトポロジカル励起の様子をモンテカルロ法を用いて調べ、さらにスピン相関関数の漸近的振る舞いなどと比較することで理論を検証した。 (4)J. Korean Phys. Soc. 53(2008)1280. 所謂Wang-Landau法に基づくMC法が最近注目されている。この研究では交替分極場中の反強磁性3状態ポッツ模型の相構造について、各層を特徴づける秩序変数を用いて相構造を精密に決定し、更に相境界の形状を決めるクロスオーバー指数を高い精度で求め、理論的予想との比較を行った。
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