研究概要 |
気体標的を用いたときに、入射陽子を同時に観測できるようダブル・スキャッタラーシステムを導入した。この際、必然的に大角散乱した陽子を観測する必要があり、気体標的を通過しエネルギーを失った陽子と2回散乱した入射陽子の収量のアンバランスが大きかった。入射陽子のビーム電流,気体標的を通過させる陽子の割合,セカンド・スキャッタラーの厚さ及び散乱陽子を検出する立体角などの最適化を図り、測定系の確立を行った。このシステムを用いて、充分な精度で阻止能の測定が可能であることを実証することが出来た。 我々の測定法では、阻止能の高精度の決定は入射陽子のエネルギーをいかに高精度で決定出来るかということに大きく依存している。加速イオンのエネルギーは分析電磁石の磁場の強さと有効曲率半径から決定される。通常は、分析電磁石の曲率半径はある磁場における観測値を用いて決定され、この値がどの様な大きさの磁場においても使えることを前提に入射イオンのエネルギーが決定されている。この事は千分の一のオーダーの精度で入射陽子のエネルギーを幅広いエネルギー領域に対して決定したいと考えている我々の測定にとっては、必ずしも充分なものではない。有効曲率半径が磁場の強さによってどの様に変化しているか、または変化せず一定値を取っているかを確認する測定を実行した。その結果、有効曲率半径は磁場の強さ800Gから5500Gまでの広い磁場領域で一定値を取っていると考えて良いことを確認した。 取り扱いが容易なNeガスやCH4ガスを用いた実験を行った結果は、他の研究者達の測定値と矛盾していないことが判った。現状は比較的データの揃っている標的ガスを用いて我々の方法が優れたものであることを確認している段階にある。
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