研究概要 |
衝突実験装置の基礎的な能力向上のために,以下の事を行った. (1) 標的ビーム(超音速ノズルビーム)強度の向上: このために,従来より用いてきた直径・厚さ共50μmのノズルを直径50μm・厚さ200μmのものに交換した.これにより,ほぼ同一圧力の試料気体をノズルに導入した時,約4倍の強度のビームが得られた.これは,従来から知られている事であり,噴出気体の収束が良くなったためとされている.この改良により,測定時間を大幅に短縮する事・より衝突断面積の小さな反応を計測する事が可能となった. (2)多価イオン生成部の差動排気能力の向上: イオン化室とイオン引出し部との間に差動排気壁を増設した.これまでは,衝突室へ導入した試料気体の約0.1%がイオン化室に逆流していたが,本改良によりそれを1/5以下に減少させる事ができた.これにより,生成イオンに含まれる不純物の減少・より安定した多価イオン生成が可能になる. また,実験結果の解析方法の確立のために,以下の事を行った. (3)実験結果解析のための量子化学計算プログラムの導入: 移植したものは,Linux OS上で動作するAlchemyプログラムである.これを用いて試験的にCHe^<3+>の基底状態・励起状態を計算した所,すでに行われた結果と一致する事が分かり,計算が正常に行えている事を確認した.また,得られた計算結果を用いることで,これまでに得られている電荷移行反応C^<3+>+He→C^<2+>+He^+の角度分布が正確に再現できる事も確認した.本研究は,散乱イオンの角度分布から多価イオン・原子間の相互作用を決定しようとするものであり,上記の解析方法が有効である事を示せた.
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