研究概要 |
生体中のたんぱく質分子やバイオマテリアル材料の機能と反応性が、周囲の水分子の水和構造に大きく影響されることが示唆され、これらの高分子や材料の水和水分子構造の評価が重要になってきている。本研究では、表面感度が高く構造の対称性に敏感な振動分光法である光和周波発生(SFG)法を用い、材料基板表面に吸着した水分子の配向と秩序の定量的な評価を行うことを目的に研究を遂行し、以下の成果を得た。 1.非イオン性ポリマー界面活性剤である2種類のプルロニック(L64,17R4)がガラス基板に吸着したときのSFG測定を行った結果、吸着したプルロニック分子の親水性部分(PEG)が自由に動ける場合(L64)に、基板表面の吸着水の量が減少することが分かった。これは、高い運動性をもつPEGが水の吸着を阻害するためと考えられる。しかし、溶液のイオン強度を大きくするとイオンの水和の影響が大きいため、ポリマー鎖の運動性の効果は見られなくなった。 2.生体適合性が比較的良いとされるチタン表面に存在する酸化チタンの水和状態を調べるため、アルコキシド法を用いて酸化チタン薄膜を作成し、pHの異なる溶液との界面のSFG観測を行った。ガラス界面と比較すると、アルカリ性溶液では顕著な違いは無く、酸性溶液において界面水の量が多くなり、中性溶液では界面水構造の秩序が低下することがわかった。 3,ガラス基板上にアミノ化SAMs(自己組織化単分子膜)と強い疎水性を示すフッ化アルキルSAMsを作成し、界面水のSFG観測を行った結果、SAMs分子及びガラス基板上のシラノール基のチャージによるクーロン相互作用、水素結合、疎水性相互作用の競合により界面水の配向と秩序が決定されることがわかった。
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