研究概要 |
生態系とタンパク質を対象に「進化的に形成」されたランドスケープの特徴についての研究を進めた。 生態系については、生態学において古典的に調べられてきた面積と種数の間に成り立つベキ関係(種数面積関係)を個体数の分布と関連づける理論を構築した。また、広い意味で生態学的な議論が適用できる細胞内の代謝物質,蛋白質,mRNAなどの量の分布に関する数理的な研究を行った。種数面積関係をより一般的な文脈に拡張することにより,単語数,都市人口,姓名の頻度や,mRNAの量のベキ分布などで知られるZipfの法則が,多様性に関係する関数を最大化する臨界点で成り立つことなどを見いだした。 タンパク質については、まず近年の「ファネル描像」では折れ畳みを記述できないマルチドメイン・タンパク質に着目して、自由エネルギーランドスケープを調べた。結果として、ランドスケープが多様であることおよびその多様性は天然構造で許される範囲に限られることを見出した。これは「ファネル描像」の自然な拡張となっている。また、タンパク質の凝集寄機構を熱力学的に議論すべく、二量体の自由エネルギーランドスケープを調べた。それに基づき、狭い領域に閉じこめられることによって、熱平衡状態への緩和現象として自発的に凝集するメカニズムを提案した。これはCJDなどアミロイド病発現の初期過程と関連するものと考えている。 なお、本年度は論文が刊行されなかったが、今年度の成果をまとめた論文が3本、すでに雑誌掲載決定している。
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